セレラザは書状を見て、わなわなと手が震えた。 怒りと恐ろしさで、だ。
どうやら手配書のようなものらしい。 しかし普通の手配書ではない。 これはー
貴族方の皆様へ
セレスティアル家は滅族の由、
先に生まれた子供は皆、地上送りにする為、
見つけられた者達は申し出よ。
全てはクロノス最高神殿下の為、
天界の平和の為、お願いする。
連絡の由は宮廷に出仕するよう.....
セレラザはそこで手紙をぐしゃりと捻り潰してしまった。「なんということを・・・!!」
しかし何故、この二人が生まれたことがこんなにも早く伝わってしまったのだろう。
注意していたはずなのに!!
いつの時代も秘め事は手に溜めた水のようにいつのまにか零れ、
広まってしまうものなのか、とセレラザは思った。
しかし、本当に何故伝わってしまったのだ。 こんなに早く伝わってしまったのなら、
もしかしたらもう1年もしないうちに殺されてしまうかもしれない。
自分の子供達は前世では古代の最高神でもあったし、
今秘めている力もすごいのだが、それを発揮できる段階ではないのだ。
そんなことを不安に感じているとフォルクトスが帰ってきた。 どうやら彼も聞いたらしい。
「・・・どうする。」「どうしましょう・・・。」ひそかに涙を溜めつつも気丈に振る舞い、話し合った。
結果は普通の子として育てるより他無かった。 このまま普通に育て、隠し通すしかー
他の下級の貴族に譲り渡す手もあった。勿論母や父に言ったら預かってくれるだろう。
しかし、子供を手放したくないというのは両者、同じであった。
「あと・・・こんな時期にすまない。 私は戦場に行くことになった。」
「!!何故です!! 一体・・・!子供達にも危険が及んでいるというのに貴方まで・・・!!」
これには重大な訳があるんだ、とフォルクトスはセレラザを慰めつつ、落ち着かせた。
「実はクロノス様の末の御子息、ゼウス様・・と言ったな・・・その方の救護に向うことになった。クロノス様の政治はもう、誰も信じず、これからはもう、他の方に委ねるしかない。」
セレラザは黙って聞き入った。「そこで今唯一、安否が確認されているゼウス様をお助けし、王座に就かせる。それでだ。」
セレラザは驚いた。 まさかクロノス様を打ちのめすとはー!!
「当分戻って来れなくなると思う。その間。子供達をよろしく頼む。」
毎回すまない・・・そういうと何かを取り出して、セレラザの首へ取り付けた。
「これはー・・」「確か宮廷に出仕しているとき、槍を使っていたな。 もし子供達に何かあったら、それで守ってやってくれー・・・」
それは金で縁取られたネックレスだった。鉱石が付いていて、七色に光る。 しかしよく見ると武器に変換する粒子が鉱石の中には含まれていてー
「こんな高価なものを・・・!!」セレラザはそう言うとフォルクトスを見た。
フォルクトスは申し訳なさそうな顔をしていた。
「お願いです。 必ず帰ってきてください。 まだ子供達も剣を習いたくて貴方様の帰りをいつも心待ちにしているのですから、」
そんな情けない顔をするのなら、せめて生きて帰って・・・・子供達とまた4人で・・・・
「分かった。」そういうとフォルクトスは自室に帰ってしまった。
セレラザは悪い予感が絶えず、不安で仕方なかったー
それからまた時が過ぎた。 もう7年も過ぎた。戦乱はまだ続き、フォルクトスはまだ帰ってこない。
どうやらゼウス様御救出までは終わったらしい。 あとはクロノスをー
そんなことを考えていると子供達が帰ってきた。「お母様! 今日ね。 ファルクスが剣舞で一番だったの!」すごかったんだよ!とサクラは言う。
それに比べ、ゼロデュガはまた暗い顔をしていた。「ゼロデュガ・・・また刻印について言われたの?」
ゼロデュガは生まれつき体中に刻印が刻まれている。 どうやら前世の名残らしく、何をやっても消えないのだ。
その為、気味悪がられ、いつも何か言われるのだ。「別に・・・大丈夫です・・・。」そう言うと、自室に戻っていった。
後姿を見つつ、心配していたが、サクラがどうやら慰めたらしく、二人で楽しそうに廊下から見えなくなっていった。
あの書状が来てもう7年ーこのまま何事もなく終わってくれればいいとセレラザは思った。
このままクロノスが退位してゼウス様が王位におつきになればセレスティアル家もそこまで隠れる必要はなかろう。そんなことを考え、セレラザは着替えもせずに床についてしまったー。
夕食は召使を用意してくれることだろう。 いつも自分がしているから、たまには召使にー
召使なら多少あの子達の相手もしてくれるだろう、そんなことを考えてー
その夜のことだった。恐ろしい悲鳴が聞こえる。 紛れもなく子供達の声だった。
セレラザは飛び起きて、二人の自室に向った。・・・いない!!!!
「は・・・母上!!」「お母様っ!!」 口を塞がれ、子供は気絶する。 何者かの腕に抱かれて。
「お待ちなさい!!」そういいながらセレラザは武器を取り、賊の後を追いかけたのだったー
フォルクトスから貰ったネックレスは瞬く間に槍へと化し、杖のような美しい鉱石の槍となった。
しかし、変化したものの、賊はー
賊は近くで止まり、下を見た。 セレラザも下を見る。 ここはー異界鏡!!
地上へと続く道。 「あ・・・・・あ・・・!!」セレラザは恐ろしくてそれだけしか口から出なかった。
現実になってしまった・・・・!!
「さぁ、ディゼンダーとして地に落ちろ。 お前はこのまま指をくわえて見てるがいい!」賊のその一言に目が覚め、セレラザは賊に向って槍を突き出し、駆けた。
「私の子供達を返してーっ!!」しかし槍は賊の服の裾だけを捉え、その瞬間に上に上がってかわした賊を捉えることは出来なかった。
子供達は首を捕まれ、異界鏡へと放り込まれる。「いやあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!サクラッ!ゼロデュガーッ!!!!!!」
セレラザは精一杯叫んだが、もう異界鏡へと放り込まれていた。
「ア・・・・あ・・・・・。」恐怖に身が震える。子供達が、子供達がー。しかし微かに声が・・・
「お母様・・・・。」「サクラ!サクラ!」異界鏡へと駆けつける。 まだ落ちてはいなかった!!
「お母様・・・さよなら・・・・ゼロデュガ・・・いいえファルクス。お母様を・・・お願い・・・。」
「え・・・・?」次の瞬間サクラはゼロデュガの手を放した。
「ッ・・・・ッ・・・ねえさ・・・姉さああああぁぁぁぁん!!!!」ゼロデュガの泣き声がこだまする。
そんな中、セレラザは一人すすり泣き、子供を慰める気力も無かったー。
暫くはゼロデュガに励まされ、何とか立ち直りつつあったが、
その5ヶ月後、また同じ手口でゼロデュガも落とされた。
セレラザは同じ手口だというのに、防ぐことも出来ず、
泣く事しか出来なかった自分をひたすらに責め続けた。
数ヶ月後ーフォルクトスは帰ってきたが、
そこにいたのは虚ろな瞳をした昔とは違うセレラザしかいなかったー・・・
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